美肌・美白の外用薬について
症状により内服薬や外用薬での治療をご提案させていただくことがあります。
お一人おひとりの症状に合わせて、メラニンの生成を抑える薬やメラニンの排出を促す薬などを処方いたします。
初めて美容皮膚科を受診される方、日々のケアで美白や美肌を目指したい方、レーザーなどの治療に抵抗がある方にもお勧めです。
『ハイドロキノン』について
美白効果が非常に高い外用薬です。
ハイドロキノンはイチゴ、麦芽、コーヒー、紅茶などにも含まれている天然の成分です。
非常に強い美白作用があり、『肌の漂白剤』とも呼ばれます。アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、ルシノール、ビタミンC誘導体、プラセンタエキス、油溶性甘草エキス(グラブリジン)などの一般的な美白成分と比較して約100倍の美白効果があるといわれています。
「メラニン色素を合成する酵素(チロシナーゼ)の働きを阻害する作用」、「メラニン色素そのものを還元し淡色化する作用」、「メラノサイト(メラニンを産生する細胞)の機能を低下させる作用」があり、これからできるシミを予防し、すでにできてしまったシミや肝斑、色素沈着を改善します。
効果が高い分、まれに赤みや刺激感、かゆみなどの副作用が出ることがあるため、処方には医師の診察が必要になります。白斑の副作用は高濃度のハイドロキノンを使用したときに起こりやすいといわれており、5%までのハイドロキノンでは報告がありません。
ハイドロキノンの主な効果は新たなメラニン色素が生成されるのを防ぐもので、今あるシミの排出を促す作用は強くありません。そのため、ハイドロキノンと一緒にシミの排出を促進する治療を併用するとより効果的です。
取り扱い製品
- ●ナノHQクリームEX(HQ4%)
- ●ナノHQクリーム(HQ1.8%)
- ●ナノメッドハイドロキノンエッセンス(HQ1%)
- ●ゼオスキン ミラミン
※ハイドロキノンは胎児に直接影響はありませんが、妊娠中は肌が敏感でかぶれのリスクが高くなるため使用をお勧めしていません。授乳中は使用できますが、心配な方はトラネキサム酸など他の外用剤をお勧めします。
使用前の注意事項
『トレチノイン』について
皮膚のターンオーバーを促進する外用薬です。
トレチノインはビタミンA(レチノール)の誘導体で、ビタミンAの約100倍の活性があります。血液中にも微量に存在する成分でアレルギー反応を起こすことはありません。しわやシミ、ニキビやニキビ痕、毛穴の改善など幅広い効果がある外用薬です。
シミへの効果
紫外線を浴びるとメラニンが過剰に作られ、皮膚に沈着してシミやくすみになります。
加齢により皮膚のターンオーバーが低下すると、メラニンが排出されずシミやくすみが残ってしまいます。トレチノインには皮膚のターンオーバーを促進する働きがあり、皮膚にあるメラニン色素を皮膚の外に排出することでシミやくすみを改善します。
肌のきめ、肌のハリ、小じわへの効果
加齢とともに角質の働きが鈍ることで皮膚のバリア機能が低下し肌の水分量が減少します。また、紫外線の影響で真皮のコラーゲン繊維が変性し減少します。それにより、肌のきめやハリがなくなりシワができます。トレチノインには表皮細胞間や角質にヒアルロン酸の沈着を促す効果があり、肌のきめを整え小じわを目立ちにくくします。また真皮のコラーゲンを作る線維芽細胞を活性化させ、ハリのある肌に導きます。
ニキビや毛穴への効果
ニキビは皮脂分泌の増加と毛穴の詰まりが原因です。トレチノインには角質を剥離して毛穴の詰まりを改善する働きと皮脂分泌を抑える働きがありニキビを改善します。またターンオーバー促進によりニキビ痕、色素沈着の改善効果があります。
トレチノイン(レチノイン酸)の働き
取り扱い製品
- ●ナノエッグトレチノイン(0.05%、0.1%)
- 高温や光で劣化しやすく保存が難しいとされていたトレチノインをナノサイズのカプセル(10-15nm)に閉じ込めて安定化したものです。
カプセルから少しずつ有効成分が放出(徐放性)されるため、これまでのトレチノインより刺激や炎症などの副作用が軽減されています。
皮膚への浸透性がよく、効果も持続しやすくなっています。常温で1年間保存が可能です。 - ●ゼオスキン ミラミックス
※トレチノインは妊娠中・授乳中の方、妊娠の予定がある方は使用できません。トレチノイン使用中は避妊をしてください。
使用上の注意点
『ハイドロキノン-トレチノイン併用療法』について
ハイドロキノンとトレチノインを併用すると、トレチノインのターンオーバー促進作用によるできてしまった肌内部のシミを排出する効果と、ハイドロキノンの還元作用による今あるシミを改善する効果とメラニン産生抑制作用によるこれからできるシミを予防する効果で、より効果的にシミを改善することができます。
『トラネキサム酸』について
肌に優しい美白効果のある外用薬です。
トラネキサム酸には抗炎症効果や抗プラスミン(メラニンを産生するメラノサイトを活性化させる物質)作用があり、美肌・美白効果を発揮します。肝斑やくすみの改善、色素沈着の改善、肌荒れや皮膚の赤みの改善効果があります。肌が敏感な方にも使いやすい外用薬です。
取り扱い製品
- ●TAホワイトクリーム
- ●ナビジョンTAシリーズ(ホワイトローション・エマルジョン)
※妊娠中・授乳中とも使用できます。
『ビタミンC誘導体』について
美白、ニキビ、毛穴、エイジングケアなど幅広い効果が期待できる外用薬です。
ビタミンCはそのまま外用しても皮膚から吸収されにくく、また空気に触れると酸化しやすい性質があります。そこで構造式の一部を変えて皮膚に吸収されやすい状態にしたものがビタミンC誘導体です。ビタミンC誘導体は皮膚に吸収され留まる性質があります。
ビタミンCにはメラニン色素の生成抑制作用とできてしまったメラニンを元に戻す還元作用があり、シミやくすみの予防や改善、にきび痕の改善効果が期待できます。また、コラーゲン産生を促進することで小じわやたるみの予防や改善効果があります。その他、皮脂分泌を抑制することでにきびを予防したり、毛穴のつまりや黒ずみの予防効果が期待できます。活性酸素を抑制することで、肌老化を予防する働きもあります。
取り扱い製品
- ●VCローション
- ●ゼオスキン シーセラム
※妊娠中・授乳中とも使用できます。
『αリポ酸』について
保湿効果や肌のハリの改善効果が高い外用薬です
αリポ酸(チオクト酸)は細胞内のミトコンドリアに存在し、生きていくために必要なエネルギーを産生しています。
αリポ酸は体内で合成されますが、加齢と共にその量は減少します。αリポ酸を皮膚に直接外用すると、抗酸化作用により皮膚老化を予防して、皮膚の弾力や質感を改善することが期待できます。皮膚は糖化により真皮のコラーゲンやエラスチンの弾力がなくなりハリが低下しますが、αリポ酸には抗糖化作用があり肌を糖化によるダメージから守ります。その他、表皮内でヒアルロン酸の産生を促進して皮膚の水分保持能力を高めることにより肌に潤いをもたらしたり、真皮でコラーゲンの生成を促進することにより肌のハリやツヤをよくし小じわを改善したり、表皮のターンオーバーを促進することによりシミを予防したりくすみやシミを目立ちにくくすることが期待できます。
取り扱い製品
- ●αリポ酸カプセルクリーム
- もともと内服薬としては有名な成分ですが、熱や光によって変性するため外用薬にする事は難しいとされていました。製剤をナノカプセル化することで皮膚浸透性が良く安定性の高いクリームになっています。
※妊娠中・授乳中とも使用できます。
『レチノール』について
厚生労働省からしわを改善する成分として承認されている外用薬です。
レチノールはビタミンAのひとつです。表皮のターンオーバーを促進し、シミを予防したり、くすみやシミ、にきび痕を目立ちにくくします。また、線維芽細胞を活性化させることでコラーゲンやエラスチンの産生を促して小じわを改善、予防したり、肌のハリやツヤをよくします。皮脂の分泌を抑制することで肌を整え、にきびを予防します。毛穴のつまりや黒ずみの予防効果が期待できます。紫外線ダメージから肌を守り、光老化を軽減したり肌の細胞のDNAを保護します。
ビタミンAにはレチノール以外にもレチノイン酸(トレチノイン)があります。
レチノイン酸(トレチノイン)は「攻めのビタミンA」とも呼ばれ、効果は高いですが、その分赤みや皮むけなどの刺激が起こりやすい外用薬です。レチノールは「守りのビタミンA」とも呼ばれ、効果はマイルドですが、刺激が少なく使いやすい外用薬です。
取り扱い製品
- ●ナビジョンDR レチノファースト
- ●ナビジョンDR レチノアドバンス
- ●ゼオスキン スキンブライセラム0.25
- ●ゼオスキン Wテクスチャーリペア
- ●ゼオスキン デイリーPD
- ●ゼオスキン RCクリーム
- ●ゼオスキン ボディエマルジョン
レチノールについての使用上の注意点
『アゼライン酸』について
にきびの原因となる毛穴のつまりを改善する外用薬です。
アゼライン酸は穀物や酵母に含まれている成分です。食事などで普段口にしている天然由来の安全性の高い成分です。妊娠中の方でも安心して使用でき、刺激も少ないため敏感肌の方でも使いやすい外用薬です。海外ではにきびの治療薬として昔から使われています。
アゼライン酸にはニキビの元になる毛穴のつまり(コメド)を改善しニキビができにくくする働きがあります。また、皮脂分泌を抑制したり、殺菌作用によりニキビ菌を殺菌したり、抗酸化作用により活性酸素を抑制し炎症の悪化を抑えたり皮脂の酸化を抑制することで、ニキビの予防や改善、にきびの悪化を防ぐ効果があります。その他、メラニン生成を抑えることによる美白作用がありニキビ痕の色素沈着を改善する効果も期待できます。
取り扱い製品
- ●ディーアールエックスAZAクリア
※妊娠中・授乳中とも使用できます。
赤ら顔(酒さ)とアゼライン酸
酒さとは顔が赤くなる病気で、ニキビの様なブツブツや膿疱ができることもあります。はっきりした原因はわかっていません。酒さの表皮には傷や細菌感染の時に発生する抗菌ペプチドのカセリサイディンが多く認められ、正常の皮膚とは異なる免疫細胞の異常活性が酒さの赤みの炎症反応を引き起こしているのではないかと考えられています。アゼライン酸にはカセリサイディンの活性化を抑制する作用があり、酒さに効果が認められます。
ニキビのようなブツブツや膿疱ができる丘疹膿疱型酒さに対し抗生剤の内服薬外用薬とアゼライン酸を併用すると改善効果があります。また改善後にアゼライン酸を使用すると再発予防効果があります。症状が顔の赤みだけの紅斑毛細血管拡張型酒さでも使用により赤みが軽減する場合があるという報告があります。
脂漏性皮膚炎とアゼライン酸
脂漏性皮膚炎は皮脂分泌が多い部位に赤みやカサカサなどの湿疹ができる病気です。アゼライン酸の皮脂分泌抑制作用、抗菌作用が脂漏性皮膚炎での皮膚の炎症を抑える効果があるとされています。